McCain(マケイン)キャンペーンで、最も多く出てくる言葉は、すでに全米中に知れ渡った「Joe the Plumber(JTP):鉛管工のジョー」です。JTPの本名は、「Samuel Joseph Wurzelbacher」ですが、マケインが10/15のObama(オバマ)とのディベイトで、米国のミドルクラスを代表する代名詞として使い始めて以来、マケインキャンペーンのテーマとなっています。すで、Palin(ペイリン)がインタビューされた回数より多く、メディア取材を受けているJTPは、アンディ・ウォーホールの言うところの「15分間の名声」を獲得して、現在はセレブレティ状態です。
オハイオ在住のJTPは、最初は「投票の意思決定をしていない有権者」として、遊説先のオバマに近づき、オバマのミドルクラスの税金政策に質問をしています。そのオバマの回答の中から、マケインキャンペーンは「富の再配分」という表現を抽出して、「JTPの名前とともに、オバマは社会主義者で米国の富を再配分しようとしている」という攻撃を続けています。年収25万ドル(2500万円)以下の税金をカットするというオバマの税金対策で恩恵を受けるのは、JTPです。その彼がなぜか最初からオバマの政策に非常に批判的で、その不審な言動が、メディアやブログ圏の疑惑を生んでいました。結果として、彼は「鉛管工」としての資格がない、税金漏れがある、共和党として登録していた、といったさまざまな情報がもれてきて、現在は「JTPを連呼するマケインは何なんだ?」という批判の声が大きくなってきています。
このマケインとJTPのダンスともいうべき関係は、すでに2週間も続いていますが、昨日は、コンサーバティブでアンチオバマともいうべきTV局のFoxも、JTPの無責任で扇情的な発言にキレタようです。JTPは、Foxとのインタビューで、「オバマに投票することはイスラエルを殺すことになるというマケイン支持者に、自分は賛成する」と発言して、それがいかに事実と異なり危険な発言であるとして、Foxのアンカーマンは、思わず、オバマは米国とイスラエルの友好関係を守ると何度も繰り返し語っていると言って、オバマ擁護に回ったくらいです。
何度もエントリしていますが、マケインが抱えるキャンペーンの根本的な問題は、「戦略に基づいてProactive(先を見越して行動する)に動くのではなく、ある事象や事件にReact(反応)したかのように、戦術的に相手をかく乱しようとする」、その姿勢にあります。これは、彼自身の性格によるものが大きいと思いますが、ペイリンの選択、ロシアとグルジア紛争への発言、金融危機の対処の仕方、今回のJTPの一件、すべてにそうした傾向が見えます。マケインは、自分の「アバター」としてJTPの名前を利用して、彼とダンスを続けて、「ペイリン効果」と同様な「JTP効果」を、この最終のストレッチで期待しています。しかし、この戦術も「15分間の名声」と同様に、どうやら短期間しか続かなかったようで、すでにJTPの正体が徐々に剥がれ落ちています。
ペイリン、JTPといった「アバター」ばかりが目立つマケインキャンペーンは、「Authenticity(本物であること)」が欠落した典型的な事例です。アバターとのダンスを今から止めて、最後の1週間でオバマを覆せるのか?この確率はかなり低い、それが今の時点での私の実感です。

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