先週、日本出張から戻って、様々な仕事に追われて、またしてもブログレスな日々となってしまいました。金曜日からは義理の息子と彼の友人夫婦が自宅に遊びに来ており、昨日は夫が日本出張なので、サンフランシスコ空港へまたしても行き、過去2週間夫婦ともども空港と自宅の間を行ったり来たりしています。
そんな中で、昨日は息子たちに誘われて、オスカーの呼び声の高かった「Slumdog Millionaire」を見るために、近所の歴史的な劇場「Alameda Theatre」に出かけました。私は過去1ヶ月日本出張の準備と出張そのものに追われて、映画にほとんど注意を払っていませんでしたが、この映画がオスカーをとるというバズは、ドンドン高まっており、オスカーナイトが始まる前に、ぜひ見ておこうと思い、出かけました。(以下にこの映画の予告編を貼り付けましたが、YouTubeでは今日の時点でおよそ270万のビューとなっています)
私は「Moviegoers(映画好き)」ではないので、この映画に関するナレッジを持たずに、劇場に足を踏み入れました。Alameda Theatreは、1932年に建てられて歴史的な建物で、70年後に1000万ドル(10億円)かけて修復されたエレガントなアールデコスタイルのシネマコンプレックスです。自宅から歩いて10分の距離にあるシアターは、外観、エントランス、館内の内装すべてが、まさに20世紀初頭の西欧建築のゴージャズさを見事にあらわしています。心地良いシートに座りながら見始めた映画は、シアターとは対照的に、インドのスラム街の臭いが即座に感じられる迫力で、私の視覚、聴覚、さらに臭覚すらも捉えて、私は映像に釘付となりました。スラム街に生きる子供たちの生活は、普段漠然と理解しているつもりになっている貧困を、改めて思い知らされるもので、大劇場で見る映画の迫力をつくづく実感しました。
内容は、貧困の中で育つ2人の幼い兄弟の異なる生き方を通じて、変わらないインド(貧困)と変わり行く(アウトソーシングとテクノロジーにおける)インドの姿を対比させて、少年と少女の愛を描いたものです。詳細は避けますが、私は主人公の「She is my destiny(彼女は僕の運命だ)」というセリフが耳にこびりつき、エンディングのあと、私も含めて劇場中の人たちは、全員拍手喝さいとなりました。この映画は見終わって「Happy」になれるもので、普段映画を映画館で見ない人にも、ぜひ出かけて大スクリーンで鑑賞することをお薦めします。
映画を見終わって早めにデイナーをした後は、自宅のリビングルームのTVの前に陣取り、みんなでゆっくりとオスカーの行方をみつめました。制作費1500万ドル(15億円)のインドの独立系の低予算映画が、監督賞と作品賞を含む8つのオスカーを受賞し、ステージにはたくさんのインド人が駆け上って喜んでいる、このシーンを見ながら、米国社会の変革を肌で感じました。もちろん、この映画は多くの矛盾も抱えており、スラム街の子供を演じる子役たちは、実際にスラムに住む貧困家庭の子供たちで、少年には「2451ドル(24万5000円)」と少女には「722ドル(7万2000円)」しかギャラが払われていないという事実も報道されています。子役の両親たちは、契約の意味もわからずにサインしており、今でも彼らはスラム街に住んでいます。いくらギャラがインドの大人の平均的サラリーの3倍だ(製作者の回答)としても、すでに1億2000万ドル(120億円)以上稼ぎ出している映画ですので、この子供たちの出演料の意味は再度考えるべきなのかなと思います。映画産業も含めてビジネスのグローバリゼーションが始まると、業界は必ずこうした問題にぶつかります。世界の著名ブランドの製造がインドや中国といった発展途上国の安い労働力でまかなわれているのは厳しい現実です。そこには、昨日の映画の中で演じていた子供たちも含まれており、複雑な経済・社会環境がからみあう現実を、どのように紐解くのかは、一人一人が判断していかなければならないものだと思います。
また昨日は、サンフランシスコのゲイの政治家を描いた「Milk」のSean Pennが、主演男優賞を受賞するというニュースも飛び込んできました。
私は映画を見ていないので、内容に関しては何ともいえませんが、リベラルな政治アクティビストとして著名なペンの受賞スピーチは喜びにあふれるものとなりました。ペンのスピーチ冒頭の言葉、「You commie, homo-loving sons of guns」は、印象的で、彼は、ゲイピープルを人権の立場から法の下での平等を訴えました。
会場の外ではアンチゲイの人たちの抗議のデモンストレーションもあり、昨年のカリフォルニアにおけるゲイマリッジの法的な否定という状況下における受賞なので、非常に大きな意味があります。サンフランシスコのゲイコミュニティCastroでは、大きなアプローズが巻き起こり、多くの人たちは昨年の溜飲を下げているようです。
ハリウッドは、時代のムードや感情を映し出す、一種のバロメーターです。「この映画を作る意味があるのか?」と叫びたくなるような、くだらない映画もゴマンとあります。ただし、そのくだらなさの中にも、時代の声を現すシグナルが潜んでおり、ごく普通に生きる人たちのリアルな声を敏感に感じ取っているのが、映画制作者だと思います。この深刻な経済危機の中で、オバマ政権は必死に舵取りをすべく、就任後の1ヶ月間、ものすごい勢いで働いています。昨日のオスカー受賞者の顔ぶれを見ていると、これも「オバマ効果」なのかなと思っています。スラム街で成長したインド人少年少女のラブストーリーとゲイの政治家の映画がオスカーを同時に受賞する、これは「オバマ大統領」を選んだ米国社会の一つのムードのリフレクションのような気がします。
ちなみに「Slumdog Millionaire」に出てくるインドのミュージックとダンスは、思わず曼荼羅の世界を連想させる強さがあります。「Bollywood Dance」と呼ばれる「Jai Ho」のダンスはすでにかなり注目を集めています。
昨年10月27日オバマ大統領の選挙キャンペーン中に、私がエントリしたオバマサポートのインドのヴィデオ「Bollywood Barack」は、これまたとんでもないもので、インドの底知れないパワーを感じました。これは本当にスゴーイという表現がピッタリのヴィデオです。

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