民主党内では年内に何とか「ヘルスケアリフォーム」を議会で通すために、60議席の民主党上院議員の賛成投票を獲得すべく、様々な交渉が党内で行なわれています。「アンチヘルスケアリフォーム」を旗印とすると共和党議員は、とにかく「審議を遅らせること」を戦術として、シニア層を中心とするコンサーバティブな人たちに、Obama(オバマ)政権の提唱するヘルスケアリフォームは莫大な金額の税金を使い、ヘルスケア改良には機能せず、社会主義国のように政府が国を乗っ取るという、脅し戦略をとっています。。そんな状況下で、私も思わず「何、これ?」と驚いてしまったのが、アンチオバマ政権&アンチヘルスケアリフォームの広告です。これはRay Griggsが制作した「I Guess I'm Racist」という1分間のヴィデオです。「オバマ政権のヘルスケアリフォームに反対するだけで人種差別主義者と呼ばれるならば、自分も人種差別主義者かもしれない」とつぶやく、様々な年齢、性別、人種の一般の人たちが登場します。
しかし、この広告は、事実や論理を無理やり捻じ曲げて、ヘルスケアリフォームを人種差別でくるむという、非常に悪意に満ちたテーマのツイストです。もちろん、常識のある人は「何を馬鹿なことを言っているんだ」と一笑に付すかもしれませんが、問題はこういうプロパガンダをそのまま信じてしまう人たちが、米国に多く存在するというリアリティです。このヴィデオは、Congressional Black Caucusのディナーで、Jesse Jacksonが、黒人下院議員に向かって語ったスピーチの中の発言「You can't vote against health care and call yourself a black man」をモチーフにして制作されていますが、言うまでもなく、この発言に関して、オバマ大統領にできることは何もありません。
アンチオバマの人たちの中には、大統領は出生証明書を提示しているにも限らず、いまだに「大統領は米国市民ではない、あるいは大統領はクリスチャンではなくイスラム教徒だ」と思っている人が多く存在し、Tea Party、Birthersというムーブメント(?)を起しています。彼らは、「オバマ大統領の存在」を受け入れられない人たちで、「厳しい経済環境下で自分の思い通りにならない人生への怒り」を大統領に投げつけています。このヴィデオ制作に代表されるような人たちは、こうした怒りに満ちたアンチオバマの人たちの憎悪をさらにかき立てるために、意図的にヘルスケアリフォームにまで、人種差別というガソリンを注いでいます。
プロパガンダは、往々にして、内容をシンプルにして、扇情的、あるいは感情的な言葉で何度も繰り返すと、その効果が表れてきます。このヴィデオには、そうしたプロパガンダの特徴が活かされています。オバマ大統領は、「米国民を常識のある大人として接する」と宣言して、その通り実行しています。ただし、Tea PartyやBirthersの参加者のように、持って行き場のない理不尽な怒りを持つ人たちには、そうした常識は通用しません。
米国在住も15年とかなり長くなってきましたが、時々こうした米国のリアリティに直面して、「南北戦争はまだ終わっていない」、それを実感します。

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